2024年12月

旧友（とも）語る自慢話は108g

そしてとうとうふゆがこなくなりました、とさ

ファンファーレ高らかに　口笛続く

四ツ屋いずみ

ポテサラになりたい芋がＪＡＺＺを聴く

牛乳の膜に映った蛍光灯

ジャガイモが待合室で挫折する

伊藤良彦

輪郭のない背で聴くテレサ・テン

どこまでが強さ深夜のセルフレジ

調律をしない黒鍵から驟雨

菊池 京

剥がせない付箋アンダースローぁざす

ガラガラの輪舞足りない短鎖脂肪酸

距骨に風あさりは軽く咳をする

河野潤々

塩の華もろさは増してゆくばかり

蕎麦も蕎麦屋で濡れない前の傘だよね

るいぼすてぃインテリジェンスな晩秋は

斉尾くにこ

雫して受け容れて上弦の月

ポエムなのシャムの血混じるネコの目青い

羊羹は虎屋　時雨の来る来ない

笹田かなえ

ブルーレットおくだけのことができない

ぺらぺらのしかもあなたの保険証

半神のように半分腰掛ける

鈴木 雀

リンドウのズルさをモザイクに嵌める

背中のファスナーお願いできるかしら

ドイツ語を話す彼女のテディ・ベア

須藤しんのすけ

私の川で星を釣るのは厳禁

濁ってたっていいでしょ（フツー）は歪

なりゆきはポルトガルには降りません

西山奈津実

生まれ変わったら春の水をまず飲むの

月のよう真水のようあなたは女王

胸に星　ブローチが落ちても平気

温水ふみ

粉砂糖から革命を始めたい

怖がりな私のための冬の靴

祝福を前世のために取っておく

飛和

超急落売ってしまおう蕎麦屋にて

返信のない一日チャリの錆落とす

一滴の罪受け止めている一葉

間瀬田紋章

モノクロの街にもホットクリスマス

語り合う夢ぼりぼりと夜更けまで

この人と生きてゆくファイナルアンサー

峯島妙

あなた、是非食べて下さい笑い茸

足揉んで心を揉んで唾のんで

癪々々、歯をたてて水を飲む

旅男

恋じゃない椅子が濡れてはいないから

おばさんのミーム仄かに狂気めく

還らない人の不実のすみれ色

藤田めぐみ