2024年9月

桃食べた声に似ているうすあかり

ネコの目が深みどりなの晩夏光

わたしたちやっと繋がる行きどまり

笹田かなえ

イナイイナイBaaちゃんあたしが母よ

トンネルを出たら　真っ白　な灰よ

竹風鈴つよい生命が悩ましい

旅男

ちょっと死ぬサンダル履きのコンビニで

喉越しが良すぎて泣いていると気づく

オルゴール止まったところから砂丘

藤田めぐみ

戻るならどうしたい、タイムトラベラー

まなうらに水草と影　人魚時代の

藻岩山眺む三三五五去って

四ツ屋いずみ

さて何処へ孤独捨てよう敗戦日

水筒に現存在を譲る夏

草の芽はざわわの風を専守する

金瀬達雄

軋轢につかれ付箋のはがれゆく

素麺の正論かかとはつるりん

参道にそのひぐらしか波の盆

河野潤々