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紗幕越しの川柳
河野潤々
2024年9月8日
#Scene 6
まえにでてかわのながれをそらんじる
蔭一郎
行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず
淀みに浮かぶうたかたかは、かつ消え、かつ結びて
久しくとどまりたるためしなし
世の中にある、人と栖と、またかくのごとし
(後略)
鴨長明の方丈記が頭をよぎる。
定年を迎え、少しずつ断捨離をしながら
これからの自分らしい生き方を、どう構築しようかと思案する中で
「方丈記を読み返してみてごらん」と、助言をいただいたような気持ちになった。
方丈記でなくとも
川端康成の『雪国』の世界へ旅してもいいし
美空ひばりの『川の流れのように』を聞いてもいい。
それぞれの読み手が思い描く川の流れの先に、自身の人生を重ね合わせ
過去へ、未来へと、思いを巡らせてみたくなるのではないだろうか。
まず作者が、わたしたちの前に出てくれたのだから。
作者と読み手の出会いを演出するかのように
川のせせらぎがやさしく語りかけてくる。
(川柳EXPO 2024 投稿連作川柳アンソロジー 編著 まつりぺきん 2024年4月)
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