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​紗幕越しの川柳

河野潤々

2024年8月22日

#Scene 5

紗幕越しの川柳フォト
ちゅうちゅうアイス今日は八月十五日
                     
草地豊子


戦後の平和な日本に生まれた私にとっては

第二次大戦における日本の敗戦や

今もなお続く対岸の戦争に対する一次情報(自身の体験に基づく情報)は

持ち合わせていない。

せいぜい二次情報(報道等)としての戦争を

どこか他人ごととして

平熱の体内に取り込むだけである。

 

でも、この日くらいは

ちゅうちゅうアイスを食べて幾分下がった体温が

元に戻るくらいの時間でいいから

せめてアイスをちゅうちゅう吸い込むくらいの力で

戦争を、平和を体内に取り込んでみようと思っている。

 

掲句と出会ってまだ5年ほどであるが

毎年この日になると

この句を口ずさみながらアイスを食べている。

 

正直に言うと

その前の日も後の日もアイスは食べているけれど。

昨年も今年も、ちゅうちゅうしたのはガリガリ君だったけれど。

 

「今どきちゅうちゅうアイスかよ」とか言って

ほっぺをすぼめながら平和を実感できるような

そんな日であり続けてほしい。

 

 

(セレクション柳人 草地豊子集 邑書林 2009年7月)


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