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紗幕越しの川柳
河野潤々
2024年8月8日
#Scene 4
あまいもので癒えるほどの愁いだったか
岡田幸生
自由律俳句作家の句集から。
「甘党だから、わかるわー」の実感以外に、
どんなところに惹かれたのか、あらためて考えてみる。
ことばの調べからは、
「あまいもので/癒えるほどの/愁いだったか」の
6・6・7のフ レーズに分けられ、
それぞれの頭に、母音から始まるやわらかいことばが
「あ」「い」「う」の順に置かれ、
一句全体が情緒豊かに紡がれているよう。
そして声に出して読んでみると、
3・3・3・3・3・4と、3連符の繰り返しにことばが
乗っかってくるようで、モヤモヤした感情が晴れて
つい先を急ぎたくなるような気分にさせてくれる。
そして最後の、やや字余り的に置かれた1音「か」に、
気づきへの喜びや、自省の念などの交錯する感情が
ギュッと凝縮されているように思う。
句の立ち姿の美しさに、うっとりしてしまうではないか。
このほかにも、いっぱいあるお気に入りから少しだけご紹介。
むかいの膝頭ににらまれている
あたしねといいかけられてやめられた
すきがありますすすきすきです
約束の女の手には女の手帳
三歩遠まわりして霜柱踏んだ
(岡田幸生 句集「無伴奏」 発行所 ずっと三時 2015年4月)
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