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​紗幕越しの川柳

河野潤々

2025年9月8日

#Scene 28

紗幕越しの川柳フォト
しずかにめくる湖面   温水ふみ

ゆびを捩じ込まないで  鈴木雀

 


SNS募集企画『#十音の不自由律俳句』に集まった

2,000句を超える作品の中から、厳選された320句が

このほど自由律俳句協会の機関誌に掲載された。

 

2句、その中から引く。

 

穏やかな湖面を眺めていると、ざわついていた心も

ほどなく落ち着き、さざ波のゆらぎと呼吸のリズムとが

いつしか重なり合ってくる。

この穏やかさの源はどこにあるのだろう。

ちょっとめくってみようか

そっと、波のゆらぎを乱さないように。

 

私のからだは、部位それぞれが意思を持っている。

例えば鼻。鼻は時折、無性に小指を招き入れたくなる。

小指は、いつでも希望を叶えてさしあげられる。

しかし、いつだって脳はこれを許してはくれない。

いつもは諦める彼女らも、この日ばかりは結託して

脳の監視をかいくぐるチャンスをうかがっている。

「それっ!」

 

しずかにめくる湖面ゆびを捩じ込まないで

 

不謹慎ながら、ひとつの作品として読むことにお許しを。

わたしの心は両腕に協力を申し出る。

「しずかに、やさしく湖面をめくってほしいの、お願い。」

「ぼくたちは別にいいけど…」

腕が湖面に近づくと、指たちは、小さなからだを

われ先にとばかり捩じ込んでこようとする。

(文字数の都合により一部省略)

みずうみって、心とからだの調和なのだと思った。

 

ほかに惹かれた作品から少々

 

ジャムの泡から鼾         

小沢史


ワサビの始源は詩       

白石ポピー


愛想十二円です     

つぐみざきあさひ


乗り越すよミント飴       

大川崇譜


耳、最小の裸体           

kiri

 

自由律俳句協会 機関誌『自由律の風7』(2025年7月) より

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