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紗幕越しの川柳
河野潤々
2025年6月22日
#Scene 24

ぶらんこにひとり お隣りもひとり
木野 清瀬
きっとお隣さんも同じことを思っている。
「ぶらんこにひとり お隣もひとり」と。
話しかけたりなどしない。
かといって、お隣さんの邪魔になることもしない。
お互いがお隣さんの存在を認め合いながら
それぞれひとりの時間を過ごしている。
ギーコギーコとぶらんこの軋む音が心地よい。
それぞれの奏でるギーコが重なり合ったときには
なぜかうれしくなったりする。
奏でる周期が変わったり、
ときに混じり合ったりを繰り返しながら、
ふくよかな時間がゆっくりと過ぎてゆく。
顔を見ずとも、言葉を交わさずとも
なにか通じ合うものがあるのだろう。
それぞれが過ごすひとりの時間が
いつしか自然に同化し
ふたりの時間になっていくように思えてしまう。
いいなぁ、この空気感。
ほかにも素敵な作品を少し。
この星で生きるしかなく夜のふらここ
手花火のあなたが水に殺す音
シャンデリア掬う紅茶の銀の匙
諭しても男は雪を食みに来る
クリスマスケーキ初めて擦る燐寸
(木野清瀬 句集『夜のふらここ』 2025年3月)
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