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紗幕越しの川柳
河野潤々
2025年5月22日
#Scene 22

氷佐藤 お前は誰だ誰なのだ
森 砂季
「お前は誰だ、誰なのだ」と繰り返し問いかけ
強調することにより、そこにいる人物の存在感が
強く浮かび上がる。
そして…
「氷砂糖」を「氷佐藤」に置換し
これに人格を与えてみる。
そして氷砂糖を自作するときの砂糖の結晶が
できる様子を観察したり
梅酒を作るときに入れた氷砂糖が
ゆっくりと溶ける経過を楽しむかのように
「氷佐藤」なる人物を生み、じっくりと
手塩にかけて育ててゆく。
性格を考えてみたり役職を与えたり
ふとした表情やしぐさを付け足すもよし
自分自身が持ち合わせない才能を
備えてあげることだってできる。
そうしてひと一人の人格を丁寧に
かたち作っていく。
ふと我に返り「こいつは誰だ、何者だ!」と
思ってみたりもするが
それ以上に、もっともっと育て上げていきたい
という意思と喜びで満ち溢れている。
「氷佐藤」の連作から一部引用
残業をことわるつよさ氷佐藤
氷佐藤デザイン会社副主任
氷佐藤 下の名前が安雄とか
恋びとの手のあたたかさ氷佐藤
片膝をついてほほ笑む氷佐藤
(森砂季 現代川柳句集『プニヨンマ』 2023年11月)
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