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紗幕越しの川柳
河野潤々
2025年2月22日
#Scene 17

視神経いま舟人と呼ばれたい
野間幸恵
句集のタイトルにある「WATER WAX」は整髪料。
液体なので髪になじみやすく、スタイリングしやすい。
水(液体)が様々なものに姿かたちを変えながら
意味性とは異なる秩序を手にし
言葉と言葉をつないでいるのだろう。
「言葉で描く世界はいつもミラクル」
「大切なのは関係性」
「混沌の中の清潔が描けていれば…」などの
あとがきを手がかりに、読みを進めてみたものの…
網膜の視細胞で感知された光は
電気信号として
眼球奥の視神経乳頭から伸びる
約120万本もの神経線維の束を介して
大脳へと届けられ
画像として組み立てられる。
この神経線維に働く数千万ものちいさな舟人たちが
バケツリレーするかのように
せっせと電気信号を手渡しで運んでいる景が浮かぶ。
ときどき視界が曇るのは彼らの汗
そんなときは目を閉じて、彼らに休息を!
うーん、作者の描くミラクルな世界を語る言葉が
あまりにも稚拙で頼りない。
耳の奥でジャマイカが濡れている
紅茶とは誰もいない庭である
ファの音が薄暮をさかさに読んでみて
フラスコを 磨きつづけるlove song
この世でもあの世でもなく耳の水
(野間幸恵 句集『WATER WAX』あざみエージェント 2016年1月)
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