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紗幕越しの川柳
河野潤々
2025年2月8日
#Scene 16

こたつの中で皇位継承
暮田真名
この作品を繰り返し暗唱していると
かつて生まれてきた息子の名前を
周囲から呼び捨てにされてほしいと願い
意味性ではなく音の響きで決めたことを
思い出した。
言葉の響きは、忘れていた過去を
呼び起こす力を持ち合わせているのだろうか。
さて、掲句。
衆議院本会議場の速記者席あたりに
こたつを置いて、
皇位継承問題が話し合われる様を想像して、
笑ってしまった。楽しい!
作者の仕立てた言葉に意味性は感じられず
どうアプローチするかは読者の自由裁量。
「こたつ」が「皇位継承」を連れてきたのか
その逆なのかは測りかねるが
前の7音と後ろの7音の関係性は
『狭隘な空間(世界)』と『やわらかさ』によって
紡がれたのではないだろうか。
足がふれあうほどにこぢんまりとした「こたつ」と
狭い世界の中で存在し続ける「皇位継承」。
そして、見た目にやわらかな表記上の「こたつ」と
耳障りのやわらかな音としての「皇位継承」。
頭韻を「KO」で揃え組み合わされた言葉が、
意味性を離れて視覚や聴覚のなかで共鳴し合い
読む者の心は理屈を超えて浮遊する。
(暮田真名 句集『ふりょの星』 左右社 2022年4月)
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