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​紗幕越しの川柳

河野潤々

2024年12月8日

#Scene 12

紗幕越しの川柳フォト
時計の無い部屋に泡立つ西陽   

おのぎのあ

 


なにもやる気が起きなかった。

どれくらいの時間が経ったのかを考えることさえ

忘れたかのように

ただ気だるさのなかに我が身を置いていた。


気がつくと

時計の針が進むのを拒絶するかのような身体を

閉じ込めた部屋には、

昼間の熱量を蓄えたままの西陽が射し込み、

その存在が徐々に大きくなってゆく。


それに呼応するように

胸のざわめきがふくらみを増してゆく。


ジリ、ジリ、ジリ。

焦る。


だが、もの憂げな心や身体は

放置され続けることを望んでいる。


時計の消えた部屋では

射し込む西陽と焦燥感との

せめぎ合いが続く。

エンディングの消されたボレロを

ずーっと奏で続けるように。


西陽に染まりゆく時間と

増してゆく焦燥感。

それぞれが異なる時間軸を持ちながら

じわり、じわりと時間が進んでゆく。


ジリ、ジリ、ジリ、ジリ。



(サザンカネット句会アンソロジー4『montage』より)

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