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紗幕越しの川柳
河野潤々
2024年11月8日
#Scene 10
一つしか知らない香水の匂い
加賀 翔
自由律俳句の句集から、詩性川柳ともいえそうな一句を。
プロローグ
暗やみの舞台に音声だけが流れる
女の声 「あっ、ごめんね、急いでるの」
「あとで連絡するね!」
紗幕の手前にスポットライトが点り、男が浮かび上がると、
客席に向かって独白をはじめる。
男 「街でばったり遭遇したときに、君が残していったものは……」
「いつもとは違っていた」
「ぼくと逢うときの君は、いつだって同じ匂いがしていた」
「男がいるのか… いやそんなはずはない」
「でも、あの日の君は、いつもよりずっと大人びた匂いがした」
「そういえば、前にも同じようなことが」
(暗転)
第一幕 男の部屋
女 「今日は元気がないわね。どうかしたの。」
男 「…」
女 「この前はごめんねぇ。急いでいたものだから」
男 (意を決したように)「あのね」
女 「ん?」
この先は、どうぞご自由に!!
コットンドレスでわかる風の形 白武ときお
体にあてたレオタードと踊る和室 白武ときお
カスタードの出口を口で塞ぐ 白武ときお
触れても触れても伝えられない触れたさ 加賀 翔
掴まれるところを探す台所 加賀 翔
(加賀 翔/白武ときお 共著 句集『鼻を食べる時間』 ㈱太田出版 2024年1月)
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