top of page
紗幕越しの川柳
河野潤々
2024年7月1日
#Scene 1
サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド聴きながら、
溶けてゆくキャラメル みたいな
須藤しんのすけ
初見、なんじゃこりゃである。
やけに長くて聞き覚えのない言葉のつらなりに、
文字は元々記号だったんだよなとか考える始末。
「サージェント~」はビートルズのアルバム!と
Google先生に教えてもらったものの、
ビートルズを聴いてこなかった者としては、ピンとこない。
であればと、ボタンのつけ直しが必要なシャツ数枚と裁縫箱、
それにたっぷりの時間を用意して、Spotifyをポチ。
針に糸が通らなくても、玉止めの失敗にやり直すはめになっても、
不思議とイライラしない。
誰が歌ってんだか、どんな歌詞なんだかもわからないのだが、
ゆったりと心穏やかな時間が過ぎてゆく。
溶け出しそうなキャラメルの気配くらいは感じられただろうか。
「溶けてゆく」を実感するには、あまりにシャツが足りなかった。
過ごしてきたふくよかな時間が「溶けてゆくキャラメル」にシンクロし、
疑似体験してみたいと思わせる魅力がある。
ゆにの3周年記念アンソロジーから、強く印象に残った
須藤しんのすけ氏の作品を引用する。
このほかに、お気に入りの中なら少し。
狂わない時計を捨てに花野まで 笠嶋恵美子
婆様に虹の端っこ持たされる 川田由紀子
ぴったしの靴で窓から出られない 重森恒雄
四次元のキャラメル箱の設計図 森平洋子
太陽を消した男の持つバケツ 吉田利秋
(『ゆにアンソロ』 発行人 芳賀博子 2024年6月)
ゆに
bottom of page