top of page

せんりゅう、ごちそうさま

笹田かなえ

2025年3月1日

川柳 林檎 No.595

薄い本

「川柳 林檎」は青森県弘前市の弘前川柳社が発行しています。隔月刊で、令和7年1月号で595号となります!まさに歴史と伝統のある結社です。

弘前川柳社について、現主幹の千島鉄男さんにお願いしてその概要を教えてもらいました。

次に、鉄男さんに書いていただいたものを、ご本人の承諾を得たうえで転載させていただきます。


 

 昭和10年(1935年)、初代主幹となった歯科医・成田我洲氏により弘前川柳社が誕生し、柳誌「りんご」を発行。(昭和60年⦅1985年⦆からは「りんご」から「林檎」へ改称)。

 初代成田主幹が約30年に亘り続けた後、2代目・宮本紗光氏、3代目・工藤寿久氏へと主幹が引き継がれ、現在は4代目・千島鉄男が平成13年(2001年)から受け継いで現在に至っている。設立から数えて令和7年(2025年)で90年もの歳月が過ぎたことになる。

 弘前川柳社は月1回の本社例句会とは別に新人を育成する目的を掲げて「ほのぼの塾」として毎月勉強会を開いている。伝統も革新も融け合っている“和”の結社として発展を続け、現在は同人数、誌友数を併せて約160名程で活動している川柳結社である。

 

昭和10年の設立というと「新興川柳時代」と呼ばれる時代からの活動になります。長きに亘って常に第一線を走ってきた「川柳 林檎」の偉大さに、改めて感動しています。

では、「川柳 林檎」の皆さんの作品をご紹介させていただきます。


終わりまた闇を奏でる三十日月  

岩崎眞里子


いい色になった苦言の釉  

濱山哲也


鉛筆は4B心が濃く描ける  

蒲公英


嘘を言うときは何度も歯を磨く  

中村誠子


抽斗を開けてときどき見る昭和  

丹下凱夫


ビールとビスコこれがわたしの守り神  

髙瀬霜石


まだ狂う何度も落花くりかえし  

きさらぎ彼句吾


涙拭き太いバナナにかぶりつく  

奥田悦生


味噌買いに行ってみそだけ買い忘れ  

寺田北城


栗ご飯今が肝心耐える時  

船水 葉


取り敢えず貴方にあげる玉子焼き 

則田 椿


次はあなたの番ですよささめ雪  

鳴海賢治


「加齢です」初期設定を超えたのね  

にじの真美


葉の裏も照らしてしまうスーパームーン 

五月陽香


ドンマイと明るくバツを丸にする  

加藤 貫


水中に沈んだ木の実だけ拾う  

香田龍馬


うちの子はいつも昼間に寝ています  

嵯峨寛之


目を閉じて掬えば採れる鰯雲  

澤田正司


ご想像にお任せします二刀流  

相馬つよし


老いの坂右と左に誘われる  

池内美智子


赤くなる財布と信号早すぎる  

工藤みよこ


生きる為懸命でしたああ昭和  

傳法けい


春まではリンゴタルトにアップルパイ 

奈良岡時枝


クマ鈴をクマに付けたい気分だね  

長利冬道


終れない鉛筆ばかり12本  

三嶋大久


車のキー渡してくれない息子の愛  

池田千衣子


あかげらを連れて一瞬秋が消え  

田中 薫


入れ歯を外せる夜が待ち遠しい  

有馬洋子


折れぬためいつもしてます骨休め  

さいとう みき


破られて痛い嬉しい新記録  

成田順子


金継ぎの手法で繋ぐ夫婦道  

阿部治幸


ほうれん草むしゃむしゃ気持ちだけポパイ  

内山孤遊


火加減はいつも強目で日が暮れる  

千島鉄男


おそらくは話尽きない黄泉のくに  

澤田芳柳


戦場の夕日夕べ私も見た夕日  

くが たかし


冬枯れに役目を終えた藁案山子  

伊藤泰秀


紅葉狩り残り少ない日がくれる  

石田礼子


友逝って着信音の鳴らぬ日々  

寺島土筆


輪廻転生この世に生きる判を押す  

ひろひろ


葉とらずと無袋リンゴが溜める蜜  

清水川魚


衣食住こんなもんだとフライパン  

北山まみどり


角砂糖一発芸に燃え上がる  

井川 進


未練など無いないナイようしろ髪  

清藤和賀子


百年の孤独平行線が残された  

小山内真由美


目出度くもないが赤飯食べている  

菊池ヒデマロ


冴えた月不思議な力湧いてくる  

太田さと子


リュウマチ性多発筋痛症の枷  

相馬のどか


五線譜をはみ出し迷う音符たち  

三木ゆりな


あの人に追いつけないな秋の雲  

菊池向日葵


世界地図いくさ無い国探してる  

黒田恵留波


底力育ててくれた四面楚歌  

三浦清雪


白鳥飛来わたしはどこへ行けばいい  

稲見則彦


ドキッとするお悔やみ欄の同じ歳  

えつこ


神様のはからいロングバケーション  

やまぐち珠美


わかったあ そんな気がしただけだった  

吉田吹喜


外は雨うすむらさきの席に着く  

浜木文代



青森県のりんごの栽培は、今から150年ほど前の明治8年(1875年)に県庁にりんご苗木3本配付されたことから始まりました。先人たちが想像を絶する困難を乗り越えて、美味しいりんごを作ってこられたことに、感謝しかありません。青森県には50種類ほどのリンゴが栽培されているそうです。ふじ、紅玉、ジョナゴールド、陸奥、世界一、北斗、つがる、王林、星の金貨、金星、等々…色も形も味もそれぞれです。

「川柳 林檎」もまさにそんな味わいの一冊でした。

せんりゅう、ごちそうさまでした。

川柳アンジェリカロゴ
bottom of page