せんりゅう、ごちそうさま
笹田かなえ
2025年1月1日
川柳びわこ738号
「川柳びわこ」2024年12月号(738号)を読ませていただきました。
裏表紙には、毎月1日発行、編集:徳永政二、発行:笠川嘉一、発行所:びわこ番傘川柳会とあります。
表紙と裏表紙を入れても20ページの、結社の冊子にしては薄い作りになっていますが、すべてのページは会員さんの作品ばかりです。
編集の德永政二さんの川柳はすごく不思議だと読むたびに思うのです。
犬小屋の中に入ってゆく鎖
ありがとうございましたと母の下駄
君の全部と僕の全部と橋の上
德永政二
世の理がざっくりと、でも適格に描き出されているところに、数学の最大公約数みたいだなと思っています。
表紙には德永さんの描かれた季節を感じさせるイラスト、そして会員さんの10句が載せてあります。
その会員さんの作品が毎号とてもいいのです。
表紙の会員さんの作品から、2句だけご紹介いたします。
スポンジにおとぎ話を含ませる
わーいとすぐに戻ってくる返事
竹内歌子
そして、びわこ近詠からおひとり1句ずつを勝手に選ばせていただきました。
びわの実はどこに濁点おとしたの
伊藤こうか
仇みたいに叩いて干しているズボン
高野久美子
だとしてもこんなことにはなるまいに
粟津亮宏
立ちこぎの自転車こんにゃく詰めほうだい
川口利江
鰯雲に届くようにと声をだす
街中 悠
おおかたのことは許そう栗の実おちた
佐野清美
雨上がる予定の場所に遠いけど
山本知佳子
洗濯機堂々巡りはワルツのリズム
木下香苗
しょうが無いしょうが無いけど紙コップ
宮井いずみ
ときめくよアサギマダラの物語
能仁澄子
今ここで何とかしたい前のめり
中村郁枝
ゴムのような言葉は嫌い木枯らしが嫌い
ひらがたかこ
私をいつも見てくれている鏡
河崎 章
思いっきり潰していいよ箱だから
岡本 聡
桜の梢見ながら目薬さしている
今井和子
人見知り座布団どこに置けばいい
中村せつこ
雲ふわりあの日もごはん食べていた
神田良子
蒼空にすじ雲ふいに出る涙
畑山美幸
わたくしの仕事見張っている夕日
浅野 忍
蒟蒻のぷるぷる踊るひりひり煮
吉田三千子
かたちなき淋しさ形ある林檎
浅田ヒロ子
ゴミ出す日慣れて地域の仲間入り
林 操
夏去って少しやれやれ針と糸
知野見松子
生きている証拠 落書きおわらない
森口ゆめみ
割れかすの炭酸せんべい大人買い
谷口 文
ふるさとのふるさとだけの歩き方
深川さゑ
ただ今も行ってきますもひとり言
石井道子
二度とない今日から明日を刻みます
大谷のり子
風少しわたしは居ても居なくても
大橋啓子
「頑張れ」が食い込むばかり空の青
木野孝子
まあまあの体調爪はよく伸びる
竹内歌子
いつのまにか疎遠となって冬になる
小西幸子
知らぬ人に去年の帽子褒められる
清水容子
新札を一瞬おもちゃかと思う
金子純子
立ち話近くて遠いお隣さん
中井正子
不思議にもみんなが違う服着てる
大西菊水
会釈する犬に覚えのある人に
髙岡よし子
赤い靴みがいて履いて若返る
三輪幸子
分かってなかったて事が分かったの
藤本花枝
たまに会う甥は心配してくれる
泉 明日香
途中です追伸なんて言わないで
伊達 稔
この日しか無かったんだと稲を刈る
山口亜都子
生きているありがたいやらつらいやら
辻野伸子
輝きのつぼみが開く巡り合い
井上恵美子
シニアカー背すじ伸ばして友が来た
佐々木幸代
くたびれた夏のパジャマが心地よい
三枝なな
そちらはいかが二人の友にひとりごと
上北周子
まだ若いつもりでいます敬老日
川村辰代
手助けは出来ないけれど里帰り
大堀美津子
ふりだけで何もしない奴は喝!
中島順子
なにもかもかぶって能がはじまった
川上幸夫
生きている証拠のつめを今日も切る
中野艶子
暑い秋一人で歩く一万歩
宇野文代
腕時計手巻き十年秋の朝
大橋定嗣
何物にもならずに終わり柿の種
谷 優
免許証返上ふんぎりついた目の病気
井上美佐子
晴れの日も雨風の日も楽しむ日
横川和弘
病院で「ハイ」と返事は空(から)元気
中村治雄
失恋のスタンプ溜めて恋ばなし
石寺北次郎
こんなにも今日は歩いた歩数計
宮崎英子
痛かったはずの記憶がないザクロ
北村幸子
何色が出るかともかく回してる
松延博子
夕日赤々いつもに戻りますように
安井茂樹
歌を歌って栗の実がまた落ちる
重森恒雄
袖畳みしたまま置いてある昨日
峯 裕見子