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せんりゅう、ごちそうさま

笹田かなえ

2026年1月1日

垂人 48号

薄い本

「垂人」は「たると」と読みます。仙台在住の広瀬ちえみさんから、いつからか送られてくるようになりました。


俳人の中西ひろ美さんと川柳人の広瀬ちえみさんのお二人が、編集・発行をなさっている、同人誌的な文芸誌です。(ちえみさん、いつも本当にありがとうございます。この場をお借りして改めてお礼を申し上げます)


内容は、俳句、川柳ばかりではありません。短歌、自由律句、詩と、さまざまなジャンルの作品が掲載されています。


読み物では今回、中西ひろ美さんの「今は使われていない・意味が変わっている古典の中のオノマトペ」がとても面白くて、すごく勉強になりました。


正直に言えば、「垂人」は私にとって難しい作品ばかりで、なかなか敷居の高いものでした。でも、それぞれのジャンルの方が、趣向を凝らし楽しんでいらしているのが感じられるのです。


次に、それぞれの作品からいいなと思ったものを書かせていただきます。

(全部を掲載できなくてすみません)



人は人鉄橋わたる蟻の列  

ますだかも


湯あたりにほっちりと浮く春の月  

中西ひろ美


隠岐めざす出航の音楸邨忌  

川村研治


とれたてのどうぞよしなに南瓜なり  

広瀬ちえみ


そこで鳴く山雀姉の通夜なれば飛んで行ってはくれぬだろうか  

渡辺信明


西日に射され

  虫に刺され 

    女に刺されないようにしよう  

中内火星


無防備に青年ねむる白いシャツ  

高橋かづき


台湾の地図広げられ五月闇 

岡村知昭


そぞろ歩や梅田ダンジョン抜けて花  

野口 裕



俳句だけでなく短歌や詩などもお一人で書かれている方もいらして、その創作力には圧倒されました。


「垂人」は、最初から「垂人」だったわけではないようです。その辺の事情をちえみさんにお伺いしたところ、「垂人」45号にちえみさんが書かれた、「垂人っていうところ」を教えてくださいました。「垂人」は2001年発行の「風谷」→「鳴峯」→「走尾」→「垂人」とその誌名を変えてきたとのことです。

その間の事情は知るよしもありませんが、その時々に吟行、句会などを行い、書くことを実践する場所だったとちえみさんはおっしゃっています。


「垂人」は年に2回の発行です。そしてちえみさんによると、50号でその使命を終えるらしいです。


「垂人」には「人」の字が入っているせいか、最初に「垂人」を目にした時にはなんだか古代の青年に出会ったような厳粛な気持ちになりました。

でも、最近は「垂人」を「タルト」と読んでスイーツのタルトを連想してしまう、不届きな私です。新鮮な季節の果物がこれでもかってほどに載ったタルトは、頬張るとこれ以上ないくらいに幸せな気持ちになります。そんなタルトを「垂人」に重ねるのは申し訳ないのですが、「垂人」は読むほどに文芸の楽しさをたっぷり味わうことができる冊子だと思っています。

せんりゅう、ごちそうさまでした。

川柳アンジェリカロゴ
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