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せんりゅう、ごちそうさま

笹田かなえ

2025年8月1日

What‛s 8号

薄い本

「What‛s」は、仙台市在住の広瀬ちえみさんが編集発行人として発行しています。

年に二回の発行で、今回ご紹介するのは、2025年4月に発行されたものとなります。


東北の川柳界の雄としてその名を馳せていた「川柳杜人」が73年の歴史に幕を下ろしたのが2020年の冬でした。「What‛s」はその翌年に発行されました。

「杜人」の同人だった方々の参加に加えて、新しいメンバーも多くて、とてもフレッシュな誌面です。


ちえみさんは「川柳と俳句の柵を取っ払って、書きたい人が書きたいように書く場所を提供していきたい」と、おっしゃっていました。


会員作品は各20句からいいなと思った作品を勝手に選ばせてもらいました。



わたくしの外側にゐる戀の猫   

鈴木茂雄(招待作家)


みんな忘れました森が静かです  

松永千秋


箱寿司の姿勢がよくて褒められる  

いなだ豆乃助


うつむくカトレアに珈琲を挽く  

竹井紫乙


あたしなんかそんじょそこらにゃ居ないから  

浮 千草


きのうにもどれみんな泣かずに済むように  

佐藤みさ子


国会におでんは持ち込めますやろか  

叶 裕


終点の大体わかるバスに乗る  

鈴木節子


ヒントくださいヒントください 真夏  

兵頭全郎


万有引力でジュンサイの出番  

妹尾 凜


そこにいるだけが猫のお仕事  

加藤久子


進んではしさって春はいぢけ虫  

水本石華


黒木さんすべてわたしが悪いのよ  

中内火星


雪山が目覚めたようだ針の風  

佐渡真紀子


歳のせいにして便器を変えていく  

月波与生


くちびるにふれるマグカップの厚み 

高橋かづき


そこそこのまじ芽ふまじ芽東風吹かば  

広瀬ちえみ



会員作品の下段には各会員さんのエッセィがあり、それもまた楽しいです。

会員作品のほかにも、水本石華さん、樋口由紀子さん、広瀬ちえみさんの歌仙「闇鍋や」の掲載があります。

他にもいなだ豆乃助さんの詩、柳本々々さんの短歌、飯島章友さんと沢茱萸さんとの対談、暮田真名さんの寄稿、妹尾凜さんの句集「白騎士を読む」、ちえみさんと樋口由紀子さんの「プリンは置いといて」の書評、叶 裕さんの前号会員作品の一句鑑賞、ちえみさんと佐渡真紀子さんによる会員作品の「前号推し推し」なども掲載されています。


そして、昨年の秋に開催された「第2回ブレンド句会+音数歳時記活用句会」の結果とその翌日に行われた歌仙の世吉「ブレンドの」は圧巻で読みごたえありました。


盛りだくさんの内容に、まさにちえみさんのおっしゃった「みんが集まれる場所」と言うのがピッタリだと思いました。


「What‛s」は小粋でバラエティーに富んでいて、ワイワイガヤガヤが似合う、ミックスサンドイッチの味がしました。

せんりゅう、ごちそうさまでした。

川柳アンジェリカロゴ
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