柔らかい指切りだったのが理由
菊池 京
今までにした数々の約束の中で、果たせたものは少ない
そもそも、約束とはそういうもの
それがわかってきただけ、大人になったということだろう。
それでも、指切りをするほどの約束はあった
小指をからませ、瞳を見つめ
きっと叶えると
きっと果たすと
誓ったあの時の
その指の冷たさを
そして、指の力がふっと抜けていったことを
今でも覚えている。
果たせなかった約束を、ふと思い出す時
指切りの儚さの痛みは
今となっては遠く、そして甘やかになっている。
Text/produced by FUJITA Megumi