濁流がきれい はなはだしく恋だ
藤田めぐみ
最初は大したことのない雨だった
すぐに止む通り雨、なんなら日も照る天気雨くらいの
どうってことのなかったはず
それなのに
気づいた時にはもう
なんてことない雨があっという間に猛り狂う河となり
囂々と音を立てる濁流に
体ごと飲み込まれようとしている
それなのに
かまうものかという自分がいる
いのちがけ、というにはあまりに実感のない
ふわふわと、呆然と
どこか最初からわかっていたと
そんな気持ちで濁流を見る
きれい、きれいだ
はなはだしく
恋とはいつも、そんなものだから。
Text/produced by FUJITA Megumi