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川柳で踊らせて
アンジェリカ会員&藤田めぐみ
2026年2月8日
#Act 38

時間ねじるには不幸が足りないわ
西山奈津実
彼女は一瞬、黙り込んでから
小さく息を吐いた。
泣き喚くなんてみっともないし
誰かを責め立てる気力もついてこない。
事態は思わぬところで躓き
信じていた話は
曖昧な言葉のまま引き延ばされて
裏の悪意を見せつけられる。
胸の奥でぐずぐずするのは
説明のつかない焦りと
そこそこな大きさの後悔。
たしかに、ついてない。
それでも
だからといって
時間をねじろうなんて。
自分の、たかが知れた不幸ひとつで
世界の仕組みが歪むと思うなんて
それは傲慢で
なにより、いじましい。
「不幸が足りないわ」
そう言って
彼女はわざとらしく肩をすくめ
ふふん、と笑ってみせる。
前を向くのよ。
当たり前だけど、時間は巻 き戻せやしない。
このくらいの不幸なんて
いくらでも笑って迎え撃ってやる。
Text/produced by FUJITA Megumi
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