先ずメモを探します霧の家
旅男
霧の中に静かに佇む家
もしかしたら、その家そのものが霧なのかもしれない
実体があるようで、ないような
そんな霧の家のドアを開く。
歩みを進める床も、触れる壁も
ひどくあやふやでよるべない。
廊下の奥に目をやるけれど
霧が高く低く流れていて、よく見えない。
“メモを残すから”
そう言って、彼は姿を消した。
そうだ、メモを探さなくては。
この家は霧のように
何もかもを曖昧にしてしまう。
彼が、彼以外の誰かが
何を残し、何を消したのか
その答えはまだ見つからず
すべては、霧の中へ。
Text/produced by FUJITA Megumi