top of page

​川柳で踊らせて

​アンジェリカ会員&藤田めぐみ

2025年4月15日

#Act 20

霧雨のボサノバ既読はつかない


斉尾くにこ

ワイパーを動かそうか迷うくらいの霧雨は

街の色を拡散させ、フォーカスを甘くして

いつもの景色と違う、どこか夢の世界に

いるような気持ちにさせる。


ワイパーと窓の細かい水滴の追いかけごっこは

まるでボサノバのようなリズム。


だが、ひとたび車を降りて霧雨の中に立てば

たちまち厄介なことになる。

傘をさすほどでもない細かい雨は

切れ切れの細い糸のようにまとわりついて

髪はじっとりと濡れ、身体と心の体温を奪うべく

静かに侵食してくる。


フロントガラスに映る霧雨の街は

現実から目を逸らした自分が見る景色。


既読がつかないメッセージ

その違和感が次第に膨らみ、心の熱を奪う頃


気がつけば雨は

本降りになっている。




Text/produced by FUJITA Megumi

川柳アンジェリカロゴ
bottom of page