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​川柳で踊らせて

​アンジェリカ会員&藤田めぐみ

2025年1月2日

#Act 13

正夢のこわいところだけ削ぐ係


温水ふみ


正夢という響きは、どこかこわい。


意識的に鈍感になって

正夢を「いいことが起こる夢」と思えばいいのかもしれないが

予知夢としての正夢のメッセージが

悪くて昏かったらどうしよう

そんなことを、子どものころは特に思っていた。


元日の夜にベッドに潜り込みながら

初夢がいいことばかりの夢でありますようにと願い

その裏で悪い夢を恐れていた幼い頃

天井のしみがおばけにも幽霊にも見えて

ぎゅっと目を固くつぶって、体を丸めた


もしも正夢の”こわいところ"を削いでくれる係が

ちゃんといてくれる、と幼い私が知っていたなら


怖くないよ 大丈夫

その正夢は、いいことばかりだからね

こわいところは全部とってあげたからね


"係”がそう言ってくれたなら

あの日の幼い私は、どんなにか安心して眠れただろう


おとなになった今、今度は自分がその"係”を拝命して

誰かの正夢の"こわいところ"をそっと削ぎ

未来は、それでもいいことが待っていると

言ってあげられるようになれたらいいな。




Text/produced by FUJITA Megumi

川柳アンジェリカロゴ
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