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会員作品を読む
笹田かなえ
2024年7月
2024年7月1日
箱開ける捨て猫だった僕だった
金瀬達雄
捨て猫に自身を重ねる構図はよくある。
今までと違うのは「だった」の過去形のリフレインが切なくて温かいこと。
箱が開けられた瞬間に、捨て猫ではなくなったと思いたい。
さくらんぼつまむ風配図を閉じて
河野潤々
「さくらんぼ」と言えば太宰治の「子供より親が大事と、思いたい」。
世間のこもごも、暮らし向き等々、家族の長としての立ち位置は
いつの時代も苦いものがありそうだ。
こんにちは!登山口からピュア衣
旅男
「春過ぎて夏来たるらし白妙の衣干したり天の香具山」(持統天皇)を思い浮かべた。
この歌のSNS的解釈とも読めて面白かった。
「ピュア衣」のひょうきんさが明るくて楽しい。
草いきれ足首見つめられて夏
藤田めぐみ
細い革ひものサンダル履きの白い素足。
ムッとする夏の叢の匂いと緑濃い色が官能的だ。
戸惑いながらも突き進むしかないと、覚悟を決めた夏がある。
幻肢痛らしき風 実家売却
四ツ屋いずみ
「実家売却」という否応ない現実の前に佇んでいる痛みが、ひしと伝わってくる。
「幻肢痛らしき風」の措辞は、これ以上ないほどに詩的昇華を遂げている。
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