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せんりゅう、ごちそうさま

笹田かなえ

2025年2月1日

月刊おかじょうき2025.1月号

薄い本

「おかじょうき」は青森県のおかじょうき川柳社の発行している月刊誌です。

北東北の小さな町の結社ですが、全国的に展開していて、その活動には目を見張るものがあります。おかじょうき川柳社は、今年から電子柳誌というスタイルで、紙での発行をしないことにしました。経費のこととか諸事情はあることと思いますが、その思い切った方針は、全国の柳社にとっても十分刺激的なことだったと思われます。


おかじょうき1月号には、第二十九回杉野十佐一賞の受賞作品が掲載されています。

すでに結果をご存知かと思われますが、上位入賞者を書かせていただきます。


第29回十佐一賞大賞作品 10点

紙屑に一度はなってみるといい 

芝岡かんえもん(神奈川県)


準賞9点

飛行機を何度折っても人になる 

辻 述(東京都) 


いちにちはだいたい紙でできている 

安井茂樹(滋賀県)


8点

追っかけて来ないよう折り鶴を置く 

佐藤雅秀(青森県)


人影のように新聞飛んでゆく 

佐藤真紀子(秋田県)


7点

(ゆうやけを)白紙にもどす遣唐使 

暮田真名(東京都)


新聞紙一枚におさまってしまう 

安井茂樹(滋賀県)


ずっとずっと折りたたまれたままの紙 

ひとり静(奈良県)


オーロラを給紙トレイに入れました 

まつりぺきん(大阪府)


老人が持ち歩いている紙の束 

小野五郎(青森県)


 

会員の皆さんの作品です。勝手に選ばせていただきました。


望まないほうへずれ出す水曜日 

峯島 妙


寒い寒いねこ死んでしまってからの 

宮井いずみ


封筒がやたら立派な年金日 

村井規子


もう少しで独り芝居も終わります 

村上あつこ


鰯雲明日の予定ありすぎる 

村上てる


何故ここにいるのかわからないが いる 

守田啓子


シャガールの青から始める一月 

柳本惠子


初詣歌留多双六二日酔 

葉 閑女


アリス呼び出すカーテンコール熱いてのひら 

𠮷田州花


十二階霧の東京また加速 

吉見恵子


付け替える翼冬空仕様、よし 

四ツ屋いずみ


予感だけ信じ最中の皮になる 

米山明日歌


弟の十年ぶりの小言です 

渡邊こあき


一本の枝が煙草の火を消した

安藤なみ


三つ星の男と女演じきる 

一帆


大法螺も入れて神無月の予定 

岩根彰子


丁度良く使い古した舫い綱 

戎 踊兵


あなたの声がひときわ映える森のなか 

奥田悦生


半月板損傷ぎりぎりオホーツク 

小野五郎


青桐は浄土の祖母の脛(齧る) 

金瀬達雄


生きたんだろか卒塔婆の長さほど 

きさらぎ彼句吾


押し付けのピーピーケトル即却下 

熊谷冬鼓


ミニシクラメンの赤い焔に包まれる 

古川啓子


婆ちゃんにだって哲学くらいある 

斎藤泰子


一個ずつ引き出し捨てに森へ行く 

坂本清乃


へ へ へ へ  へ へ へ へ  へ へ へ へ わらふくさ

(表記は字がすべて90度右回転)

嵯峨山 登


五七五の色の際立つヒアシンス 

笹田隆志


誰もおかえりとは言わん 蟻の群れ 

芝岡かんえもん


夜中に目が覚めて母の居ない家 

城後朱美


あなたが溢れた 気がした だけ なのか 

Sin


大切な嘘はこっそり二回言う 

須藤しんのすけ


骨っ節強くなくっちゃ女でしょ 

高木まあこ


納得が出来ない王様は裸 

瀧尻善英


ぶっちゃけいまアタマがとんがってます 

田中 薫


とりあえずこむら返りと話し合う 

辻井洋子


笑い顔と泣き顔分ける窓ガラス 

夏草ふぶき


あまやかししないようそらまめのそら 

鳴海賢治


回転ドアくるり戒名は決めてある 

まきこ


お話の続きに期待してた頃 

まみどり


太陽系を遠回りして星になる 

三浦蒼鬼


星空とガラガラヘビの後ろ足 

むさし


ランク外でも俺には合うラーメン屋 

佐藤まさあき


この落差のぼるザイルがみあたらぬ 

斉藤蛙井


万歳の直後に仕掛けられた罠 

瀧尻善英


大海の揺れる艀のラブレター 

村上昌子


別世界長者番付第一位 

福田芳記


年金日ちょっと贅沢するランチ 

磯島雅男


誕生日待たずに娘とのランチ 

城後朱美


シナリオの通りに付かぬランキング 

木村奈生美


待たなくてコンビニがある車中食 

白山修治


意図的に操作されてるランキング 

高田幸柳


 

私が「おかじょうき」を知ったのは、北野岸柳さんが代表の頃でした。岸柳さんの人脈の広さで、全国の著名な川柳作家を招かれ、毎年大会を開いていたのがとても刺激的でした。青森県の川柳界においても多大な貢献をされたのでした、また飽くなき挑戦者としてのイメージがあり、その精神は今でも受け繋がれているのです。

「おかじょうき」、食べればスタミナもりもり、生姜とニンニクの効いた豚肉の生姜焼きの味がしました。

せんりゅう、ごちそうさまでした。


「おかじょうき」のHPです。ぜひ、ご覧になってください。

https://okajoki.com/bucknumber/

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