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​川柳で踊らせて

​アンジェリカ会員&藤田めぐみ

2025年9月15日

#Act 30

地下鉄の終着駅は海の中


伊藤良彦


ドアが開いた先は、静かな海だった。

ホームの蛍光灯は水に揺らぎ

光の帯が深海に沈んでいく。


クラゲが改札を抜け

サメが通路をゆっくりと泳ぐ。

乗客たちは誰も驚かず

濡れた切符を握りしめたまま歩いていく。


「終点、海底です」

アナウンスは淡々としている

でも、ここから先に行ける路線はもうない。


僕だけが気づいていた

息を止めることを

まだ教わっていないことに。


窓の外で魚群が渦を描き

駅名標を覆い隠す。


最後尾の車両には、もう誰も座っていない

ただ、深い海鳴りだけが響いている。


Text/produced by FUJITA Megumi


川柳アンジェリカロゴ
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